もやし大学生の「やるしかねえよ」

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Theピーズアルバム「とどめをハデにくれ」レビュー

どうも、「思わせぶりビッチを全力で愛したいクソ童貞」こと、もやし大学生です。

 

ブログ初更新となる今回、僕の大好きなバンド、Theピーズの『とどめをハデにくれ』というアルバムの紹介をしていこうと思います。

 

こんな1993年発売、オリコン圏外の9曲しか入ってないアルバムのレビューをするのは、「女が多いという理由だけで履修したスペイン語授業(初級)」レベルに意味のないことかもしれません。

 

だけど、だけどです。

 

浪人した挙句親元離れて大学入学したのに、勉強でも部活でも己の圧倒的実力の無さへの絶望を繰り返すのみの日々を送り、「とうとういい夢も見れなくなった」僕が、好きだったB'z・AEROSMITHMetallica等のアルバムに代わって、耳に穴が開くまで無限回再生するようになったこのアルバム。

 

オラ、このアルバムへの想い文字にして、敬愛するTheピーズというバンドへの愛を形にして残してえんだわ。

 

ということで、さっそく紹介に入ろうと思います。

 

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『とどめをハデにくれ』(Theピーズ/1993)

1.映画(ゴム焼き)

2.好きなコはできた

3.日が暮れても彼女と歩いてた

4.みじかい夏は終わっただよ

5.今度はオレらの番さ

6.井戸掘り

7.手おくれか

8.日本酒を飲んでいる

9.シニタイヤツハシネ 〜born to die

 

〜〜〜〜〜

【総評】

並ぶ曲名からわかるように、明るい曲など1つもない。

一曲目に8分越えの『映画(ゴム焼き)』をぶち込んでくるあたり、まともな人間に「聴かせてあげよう」という気遣いは微塵も感じられない。

そしてなにより、アルバムタイトル曲『とどめをハデにくれ』が本アルバムに収録されていないのである(楽曲自体は次作アルバム『どこへも帰らない』に収録)。

 

たまんねえんだよな、、、、このめちゃくちゃさが、、、、

 

とらわれない、かといってそれを誇るわけでもない、『Theピーズ』というバンドの「間合い」に一発で引き込んでくる、そっけないながら強力で魅力的な、このスタイル。

 

さっきも言ったように、明るい曲など1つもないし、自分を肯定する歌詞なんて1つも出てこない。しかもこの自己批判は、今日の日本音楽界で溢れかえっている「承認欲求に裏付けられた自虐的歌詞」みたいな、なまっちょろい気色悪いものとは訳が違う。

『自分を正面からまともに見れねーよボロだもん』(シニタイヤツハシネ 〜born to die)

こんな救いようのない自己批判が、永遠と繰り返されるのである。その姿勢は、僕が愛読する太宰治の晩年期の作品群に共通するような、そんな感じがする。

 

しかしこのアルバム(というかTheピーズというバンド自体)の真骨頂は、この徹底した自己批判を続けながら、それでも「死ぬこともできずに」、ある種の開き直りを見せて日々を「生きのばし」ていこうとする、非常に力強い意思だろう。そして、その「生きのばし」の決心の源は、他者・世界に対する深い愛なのであって、自己を愛することができない他者に対する深い愛なのである。

 

だから僕はTheピーズが、このアルバムが好きなんだ。Theピーズも僕も、自虐を他者に簡単にできるような、結局自分で自分を愛せるようなシロモノではないのである。そんな中で、愛する日々を、愛する人と過ごすために、精一杯の「生きのばし」を続ける、これがTheピーズ、そしてこのアルバムのカッコよさなのだ。

 

〜〜〜〜〜

1.『映画(ゴム焼き)』

このアルバムの初陣を飾る8分越えの楽曲。ただし、この8分にはLed Zeppelinの『Stairway to Heaven』のようなドラマティックさは無い。『映画(ゴム焼き)』の刹那的な情景が、心地よいコード進行の中で、そして少し危険なロール感の中で淡々と描かれていく。

Vo.大木温之の投げやりでありながらエモーショナルな歌唱に、意味はわからないのにどうしても泣いちゃうんだよな…泣けるとかじゃない、泣いちゃうんだ…

 

「こんないい天気だってのに わざとヘンな船に乗った いやなモンを見ていた」

 

 

2. 『好きなコはできた』

投げやりでぶっきらぼうだけど、愛することができる人を見つけたことの喜びをストレートに歌った、そんなラブ・ソング。この曲も7分越え。

こんな自分にも好きになっていい、浮かれていい、そんなコがいるってこと!!それが何より嬉しいんだよな!!クソわかるわ!!

まあここでいかにもTheピーズらしいのは、タイトルが『好きなコ"は"できた』ってとこなんですわ…この曲から『日が暮れても彼女と歩いてた』『みじかい夏は終わっただよ』と続く3曲は3部作のようにストーリー的なつながりがあると思われるが、このタイトルの時点で最後の結末は想像がついてしまう…

 

「シラフでどこまでもルンルンするぞ 見つけたぜマジで」

 

 

3. 『日が暮れても彼女と歩いてた』

夕暮れの風景を想起させる、叙情的なTheピーズの必殺ラブ・バラード。ぶっきらぼうで刹那的な歌詞の中に不器用な愛が確かに感じられて、本当にかっこいい。

最後の「日が暮れても彼女と歩いてた…」という歌詞は、ライブでは気づくと「気が触れても彼女と歩いてた…」に変わっている。

そうなんだよな…夢の中でもいい、気が狂って見ていた幻想の中でもいい、ただ日常の風景の中で、彼女と歩いていたいだけなんだよ…

絡みつくような、泣いているようなギターが狂おしいほど感傷的。

 

「見ていたい、まだ見ていたい 何にも見当たらねえや オラ夢の中なんだ」

 

 

4.『みじかい夏は終わっただよ』

『好きなコはできた』『日が暮れても彼女と歩いてた』で幸せ、愛の温もりを感じていた主人公が、孤独な陰鬱の地獄に帰ってくるようなそんな曲。かなり危険なサウンドが最高に頭をぶっ壊してくれる。

だいたいそう、夢を見るのは夏で、夢を見てる季節ってのは一瞬で過ぎていくんだよ…終わってしまった、何も残らなかった夏を、夢を、ただ見つめる、そんな歌。

 

「私生活がメチャクチャだよ やりたいことはあったけどよ もうやりたいこともねーだよ」

 

 

5.『今度はオレらの番さ』

この曲は、個人的には大木温之がバンドメンバーについて歌った曲なのではないかと思っている。なんとなく同じような感覚を持った愛すべき相棒と、壊れてしまいそうな現実の中で開き直りをみせる、そんな歌なのかな…

そしてあえて区切りをつけるなら、この歌までがこのアルバムのA面なのかなと思う。短調の暗いコード進行ではあるが、演奏は楽しそうな、そんな一曲。

 

「あんたの方が素敵だよその辺のやつより あんたを全部知ってるよ目の前のオイラが」

 

 

6.『井戸掘り』

この曲から、このアルバムのB面だと僕は勝手に思っているのだが、ここからの4曲はまあ奈落の底に落ちて、極めて絶望的な、精神的にキツいナンバーがつらつらと続いていく。

『井戸掘り』なんてタイトルからその負のイメージは凄くて、結局最後にそれは歌詞で「墓掘り」であることが明かされる。「セミすら鳴きゃしねえ」炎天下、「君に褒められたかった」主人公が墓掘りかもわからんような井戸掘りを続ける。本当に我が身に痛みが堪える。

 

「サジ投げたって何もないさ 投げれんのかわからないってのが本音さ」

 

 

7.『手おくれか』

大切なものを失ってしまった主人公が、その絶望を歯食いしばって凝視している、そんな歌。行き詰まり、もう晴れ舞台には立てなくなってしまった男の陰鬱すぎるソウルが痛切なほどに響いてくる。

取り返しのつかないことって世の中には沢山あって、そんな状態になってしまうことはとても不幸なことであるのに、自分だけのせいでそのドロ沼にはまっていってしまう。キツイよ…

 

「キレイな目をしてた ビビってオラ逃げたのさ ひとりぼっちか もう戻らないか」

 

 

8.『日本酒を飲んでいる』

ごまかしのための飲酒によって逆に見えてくる、人生に対するむごたらしいほどの諦念が、ぶっきらぼうにかつ感傷的に歌われる。「一人きりで盛り上げて酔っ払って寝る」クソみたいな自分は、それでも日本酒を飲んでいる、ただそれだけなんだよな…

Theピーズらしい、ちょっとひねっためちゃくちゃカッコいいコード進行の絡みつくようなブルース。個人的にこの曲のギターソロは本当に好き。

 

「抜け殻でいいよ なんも欲しくねえよ ほっといていーよ」

 

 

9.『シニタイヤツハシネ 〜born to die』

このアルバムを締めくくる、このアルバムのコンセプトでもあるような大曲。凄まじいほどに追い込まれ、奈落の底から這い上がることもできずにいる人間の、徹底した自己批判が鳴り響く危険なロールの中で繰り返される。

自己批判の内容は、現実にただ打ちのめされた人間にグサグサ刺さる。Vo.大木温之の歌唱もあまりに痛々しい。

ただこの曲でもこのアルバム全体でも、貫かれるメッセージは「生活を続けるしかない」というものなのである。Theピーズは死なないし、死ねない。太宰治とか三島由紀夫とか、ああいう人間とは違うのだ。

僕もTheピーズもいつかは死ぬ(born to die)けど、それを自分で決するような判断はしないし、できないのである。これがTheピーズが示してくれる、生に対する一種の諦念と、それに対する開き直りなのだ。

 

「何遍も思い通りにいかないばかりで とうとういい夢も見れなくなったのさ」

 

 

〜〜〜〜〜

長くなりましたが、これでアルバム紹介を終わります。

誰がなんと言おうと、このアルバムは俺の21歳というクソみたいな青春の一部だし、死ぬまで大切にしたいと思える一枚です。

 

愛を残せたかな。年取った俺がこの文章を見て、21歳の自分が愛していたものを感じ取ってくれれば、そんなに幸せなことはないよ。

 

長く稚拙な文章、最後まで読んでくださりありがとうございました!!